1.2 賃金の仕組みと賃金の決め方

労働費用の構成から賃金の仕組みを見てみる。労働費用は、企業が労働者を雇用するために支出する費用である。現金給与と現金給与以外の費用からなっている。現金給与以外の費用には退職金、法定福利費、法定外福利費、教育訓練費などがある。現金給与は定期給与と賞与·一時金に分けられている。定期給与は毎月決まって支給するものであり、所定労働時間の労働に対する支払う所定内給与と所定労働時間以外の労働に対する支給する所定外給与からなっている。所定内給与は基本給と手当てがある。図1-1は労働費用の構成である。賃金は現金給与に関するものである。

図1-1 労働費用の構成

日本の場合、賃金の仕組みは月給とボーナスからなっている。その中に基本給がもっとも重要な部分である。基本給は年間賃金の約6割を占めているが、賞与や退職金なども基本給を基準にして金額が決められるので、基本給は総収入に8割ぐらい占める須田“日本型賃金制度の行方”2004の6頁。と言ってもいいくらいである。その理由で、本書では日本企業における賃金、特に基本給の決め方に焦点を当てて考察してみたいと思う。

個別賃金の決定に関わる賃金制度は内部公平性と外部競争性という二つの基準に設定されるべきである。内部公平性基準は企業内の従業員間の賃金序列が決まり、外部競争性の基準は賃金水準(賃金の絶対額)の設定に関わる。内部公平性の基準にあたっては、欧米では職務基準を用い、日本では人基準を用いてきた奥林“入門人的資源管理”2005の163頁を参照したが、須田“日本型賃金制度の行方”2004、竹内“人事労務管理”2001などでも指摘された。。内部公平性の基準は働く人から受容されるのが重要である。外部競争性の基準にあたっては、労働市場の賃金水準によって賃金を設定するのは人材の雇用·定着に大きく影響するが、日本企業の場合は長期雇用なので、労働市場の需給関係はあまり賃金に影響しないと言われることもある竹内“人事労務管理”2001の第7章、須田“日本型賃金制度の行方”2003の9頁で指摘された。