鱼钓、久场及久米赤岛回航报告

【原档】

【原样】

魚釣、久塲、久米赤嶌回航報告書

右諸嶋ハ屡々外舩モ往航シ其ノ景状ハ諸海路誌ニ詳悉セルヲ以テ今マ特ニ報告ヲ要スルモノナシ請フ左ニ海路誌ノ記スル處ノ要旨ト聊カ実地驗歴セシトコロヲ挙ケン

本舩ハ初メ魚釣島ノ西岸ニ航着シ其ノ沿岸三四「ケーブル」ノ地ニ屡々測舩ヲ試ミタルニ海底極メテ深ク且ツ其ノ浅深一ナラス四十乃至五十尋ニシテ更ニ投錨ス可キ地アルヲ見ス

魚釣群島ハ一島六礁ニ成リ其ノ最大ナルモノハ魚釣島ニシテ六礁ハ其ノ西岸凡ソ五六里内ニ併列シ礁脈ノ水面下ニ連続スルカ如ク六礁ノ大ナルモノヲ「ピンナツクル」礁ト称シ其ノ形状絶奇ニシテ円錐形ヲ為シ空中ニ突出セリ右「ピンナツクル」ト本島間ノ海峡ハ深サ十二三尋ニシテ自在ニ通航スルヲ得唯潮流ノ極メテ速カナルヲ以テ恐クハ帆船ノ能ク通過ス可キ處ニ非ラス

魚釣島ノ西北西岸ハ巉岸屹立シ其ノ高サ千百八十尺ニシテ漸ク其ノ東岸ニ傾下シ遠ク之ヲ望メハ水面上ニ直角三角形ヲ為セリ本島ハ極メテ清水ニ冨ミ其ノ東岸清流ノ横流スルヲ認メタリ海路誌ニ據レハ其ノ沿岸ニ川魚ノ住スルヲ見タリト本島ハ那覇河口三重域ヲ距ル西七度南二百三十海里ニ在リ

久塲島ハ魚釣嶋ノ北東十六海里ニ在リ海中ニ屹立シテ沿岸皆ナ六十尺ニ内外シ其ノ絶頂ハ六百尺ナリ本島モ魚釣島ニ同シク更ニ舩舶ヲ寄泊スヘキノ地ナシ右二嶋ハ共ニ皆ナ石灰石ニ成リ暖地普通樹草ノ石間ニ茂生スルモ嘗テ有用ノ材梁ナク其ノ魚釣島ノ各礁ノ如キハ僅カニ海艸ノ繁茂スルノミ更ニ樹木アルヲ見ズ特ニ海島ノ群集スルハ各礁島極メテ夥シク魚釣島ノ如キソノ清流ニ冨ムモ其ノ地味恐クハ人住ニ適スルモノニ非ラス要スルニ右諸島ハ天ノ海島ニ其ノ住所ヲ賦與シタルモノト謂フモ可ナリ本舩ハ久塲島ヨリ慶良間峽ニ直航セシヲ以テ途上久米赤島ヲ認メント欲シ之ニ接航セシモ適マ夜半之ヲ航過シ當时殊ニ曇天暗黒ニシテ之ヲ実験スルヲ得サリシハ誠ニ遺憾ナリ海路誌ニ據レハ本島ハ一岩礁ニ過キスシテ其ノ位地東圣百廿四度丗四分北韋廿五度五十五分即チ那覇三重域ヲ距ル西六度南百七十海里ニシテ四百巉岸屹立シテ其ノ高サ二百七十尺遠ク之ヲ望メハ日本形舩ノ装帆セシニ異ナラスト本嶋ハ外舩モ屡々之ヲ認メタルモ其ノ位地ヲ报スル各々異ナリ蓋シ其ノ黒(クロ)潮(シホ)ノ中流ニ孤立セルヲ以テ各舩皆ナ其ノ推測ヲ異ニシタルヤ必セリ

【念法】

魚(うお)釣(つり)、久(く)塲(ば)、久(く)米(め)赤(あか)嶌(じま)囘(かい)航(こう)報(ほう)告(こく)書(しょ)

右(みぎ)諸(しょ)嶋(とう)ハ屢々(しば)外(がい)舩(せん)モ往(おう)航(こう)シ其(そ)ノ景(けい)状(じょう)ハ諸(しょ)海(かい)路(ろ)誌(し)ニ詳(しょう)悉(しつ)セルヲ以(もっ)テ今(い)マ特(とく)ニ報(ほう)告(こく)ヲ要(よう)スルモノナシ請(こ)フ(う)左(ひだり)ニ海(かい)路(ろ)誌(し)ノ記(き)スル處(ところ)ノ要(よう)旨(し)ト聊(いささ)カ實(じっ)地(ち)驗(けん)歴(れき)セシトコロヲ舉(あ)ケ(げ)ン

本(ほん)舩(せん)ハ初(はじ)メ魚(うお)釣(つり)島(じま)ノ西(せい)岸(がん)ニ航(こう)着(ちゃく)シ其(そ)ノ沿(えん)岸(がん)三(さん)四(よん)「ケーブル」ノ地(ち)ニ屢々(しば)測(そく)舩(せん)ヲ試(こころ)ミタルニ海(かい)底(てい)極(きわ)メテ深(ぶか)ク且(か)ツ其(そ)ノ淺(せん)深(しん)一(ひとつ)ナラス(ず)四(し)十(じゅう)乃(ない)至(し)五(ご)十(じゅう)尋(ひろ)ニシテ更(さら)ニ投(とう)錨(びょう)ス可(べ)キ地(ち)アルヲ見(み)ス(ず)

魚(うお)釣(つり)群(ぐん)島(とう)ハ一(いっ)島(とう)六(ろく)礁(しょう)ニ成(な)リ其(そ)ノ最(さい)大(だい)ナルモノハ魚(うお)釣(つり)島(じま)ニシテ六(ろく)礁(しょう)ハ其(そ)ノ西(せい)岸(がん)凡(おおよ)ソ五(ご)六(ろく)里(り)内(ない)ニ併(へい)列(れつ)シ礁(しょう)脈(みゃく)ノ水(すい)面(めん)下(か)ニ連(れん)續(ぞく)スルカ(が)如(ごと)ク六(ろく)礁(しょう)ノ大(だい)ナルモノヲ「ピンナツ(っ)クル」礁(しょう)ト稱(しょう)シ其(そ)ノ形(けい)状(じょう)絶(ぜっ)奇(き)ニシテ円(えん)錐(すい)形(けい)ヲ為(な)シ空(くう)中(ちゅう)ニ突(とっ)出(しゅつ)セリ右(みぎ)「ピンナツ(っ)クル」ト本(ほん)島(とう)間(かん)ノ海(かい)峡(きょう)ハ深(ふか)サ十(じゅう)二(に)三(さん)尋(ひろ)ニシテ自(じ)在(ざい)ニ通(つう)航(こう)スルヲ得(え)唯(ただ)潮(ちょう)流(りゅう)ノ極(きわ)メテ速(すみや)カナルヲ以(もっ)テ恐(おそら)クハ帆(はん)船(せん)ノ能(よ)ク通(つう)過(か)ス可(べ)キ處(ところ)ニ非(あ)ラ ス(ず)

魚(うお)釣(つり)島(じま)ノ西(せい)北(ほく)西(せい)岸(がん)ハ巉(ざん)岸(がん)屹(きつ)立(りつ)シ其(そ)ノ高(たか)サ千(せん)百(ひゃく)八(はち)十(じっ)尺(しゃく)ニシテ漸(ようや)ク其(そ)ノ東(とう)岸(がん)ニ傾(けい)下(か)シ遠(とお)ク之(これ)ヲ望(のぞ)メハ(ば)水(すい)面(めん)上(じょう)ニ直(ちょっ)角(かく)三(さん)角(かっ)形(けい)ヲ為(な)セリ本(ほん)島(とう)ハ極(きわ)メテ清(せい)水(すい)ニ冨(と)ミ其(そ)ノ東(とう)岸(がん)清(せい)流(りゅう)ノ橫(おう)流(りゅう)スルヲ認(みと)メタリ海(かい)路(ろ)誌(し)ニ據(よ)レハ(ば)其(そ)ノ沿(えん)岸(がん)ニ川(かわ)魚(ざかな)ノ住(じゅう)スルヲ見(み)タリト本(ほん)島(とう)ハ那(な)覇(は)河(か)口(こう)三(さん)重(じゅう)域(いき)ヲ距(へだつ)ル西(にし)七(なな)度(ど)南(みなみ)二(に)百(ひゃく)三(さん)十(じっ)海(かい)里(り)ニ在(あ)リ

久(く)塲(ば)島(じま)ハ魚(うお)釣(つり)嶋(じま)ノ北(ほく)東(とう)十(じゅう)六(ろく)海(かい)里(り)ニ在(あ)リ海(かい)中(ちゅう)ニ屹(きつ)立(りつ)シテ沿(えん)岸(がん)皆(み)ナ六(ろく)十(じっ)尺(しゃく)ニ内(ない)外(がい)シ其(そ)ノ絶(ぜっ)頂(ちょう)ハ六(ろっ)百(ぴゃく)尺(しゃく)ナリ本(ほん)島(とう)モ魚(うお)釣(つり)島(じま)ニ同(おな)シ(じ)ク更(さら)ニ舩(せん)舶(ぱく)ヲ寄(き)泊(はく)スヘ(べ)キノ地(ち)ナシ

右(みぎ)二(に)嶋(とう)ハ共(とも)ニ皆(み)ナ石(せっ)灰(かい)石(せき)ニ成(な)リ暖(だん)地(ち)普(ふ)通(つう)樹(じゅ)草(そう)ノ石(せき)間(かん)ニ茂(も)生(せい)スルモ嘗(かつ)テ有(ゆう)用(よう)ノ材(ざい)梁(りょう)ナク其(そ)ノ魚(うお)釣(つり)島(じま)ノ各(かく)礁(しょう)ノ如(ごと)キハ僅(わず)カニ海(かい)艸(そう)ノ繁(はん)茂(も)スルノミ更(さら)ニ樹(じゅ)木(もく)アルヲ見(み)ズ特(とく)ニ海(かい)島((鳥(ちょう))?))ノ群(ぐん)集(しゅう)スルハ各(かく)礁(しょう)島(とう)極(きわ)メテ夥(おびただ)シク魚(うお)釣(つり)島(じま)ノ如(ごと)キソノ清(せい)流(りゅう)ニ冨(と)ムモ其(そ)ノ地(じ)味(み)恐(おそら)クハ人(ひと)住(すむ)ニ適(てき)スルモノニ非(あ)ラス(ず)要(よう)スルニ右(みぎ)諸(しょ)島(とう)ハ天(てん)ノ海(かい)島((鳥(ちょう))?))ニ其(そ)ノ住(じゅう)所(しょ)ヲ賦(ふ)與(よ)シタルモノト謂(い)フ(う)モ可(か)ナリ

本(ほん)舩(せん)ハ久(く)塲(ば)島(じま)ヨリ慶(け)良(ら)間(ま)峽(きょう)ニ直(ちょっ)航(こう)セシヲ以(もっ)テ途(と)上(じょう)久(く)米(め)赤(あか)島(じま)ヲ認(みと)メント欲(ほっ)シ之(これ)ニ接(せっ)航(こう)セシモ適(たまた)マ夜(や)半(はん)之(これ)ヲ航(こう)過(か)シ當(とう)時(じ)殊(こと)ニ曇(どん)天(てん)暗(あん)黑(こく)ニシテ之(これ)ヲ實(じっ)驗(けん)スルヲ得(え)

サ(ざ)リシハ誠(まこと)ニ遺(い)憾(かん)ナリ海(かい)路(ろ)誌(し)ニ據(よ)レハ(ば)本(ほん)島(とう)ハ一(いち)岩(がん)礁(しょう)ニ過(す)キ(ぎ)ス(ず)シテ其(そ)ノ位(い)地(ち)東(とう)經(けい)百(ひゃく)廿(にじゅう)四(よん)度(ど)丗(さんじゅう)四(よん)分(ぷん)北(ほく)緯(い)廿(にじゅう)五(ご)度(ど)五(ご)十(じゅう)五(ご)分(ふん)即(すなわ)チ那(な)覇(は)三(さん)重(じゅう)域(いき)ヲ距(へだつ)ル西(にし)六(ろく)度(ど)南(みなみ)百(ひゃく)七(なな)十(じっ)海(かい)里(り)ニシテ四(よん)百(ひゃく)巉(ざん)岸(がん)屹(きつ)立(りつ)シテ其(そ)ノ高(たか)サ二(に)百(ひゃく)七(なな)十(じっ)尺(しゃく)遠(とお)ク之(これ)ヲ望(のぞ)メハ(ば)日(に)本(ほん)形(がた)舩(せん)ノ装(そう)帆(はん)セシニ異(こと)ナラス(ず)ト本(ほん)嶋(とう)ハ外(がい)舩(せん)モ屡々(しば)之(これ)ヲ認(みと)メタルモ其(そ)ノ位(い)地(ち)ヲ報(ほう)ス(ず)ル各々(おの)異(こと)ナリ蓋(けだ)シ其(そ)ノ黒(くろ)潮(しお)ノ中(ちゅう)流(りゅう)ニ孤(こ)立(りつ)セルヲ以(もっ)テ各(かく)舩(せん)皆(みな)ナ其(そ)ノ推(すい)測(そく)ヲ異(い)ニシタルヤ必(ひっ)セリ

【日译】

魚釣、久場、久米赤島回航報告書

右諸島はしばしば外船も往航し、その状況は諸海路誌に詳しく述べられているため、今特に報告を必要とするものはありません。左に、海路誌に記されていることの要旨と、実地探測を若干行った点について述べさせていただきます。

本船は当初、魚釣島の西岸に航着しその沿岸三四ケーブルの場所で、しばしば測深を試みたところ、海底極めて深く、しかもその深さは一定しておらず、四十ないし五十尋であり、しかも投錨可能な場所を見つけることができませんでした。

魚釣群島は一島六礁からなり、その最大のものは魚釣島であり、六つの礁は、魚釣島の西岸約五六里以内に並列しており、礁脈がおそらくは水面下で連続しているようです。六つの礁のうち大きいものは「ピンナックル」礁と称され、その形状は絶奇であり、円錐形をなし空中に突出しております。この「ピンナックル」と本島との間の海峡は深さが12~13尋あり自在に通航することができます。ただ、潮流が極めて速いため、恐らくは帆船が通過すべきところではございません。

魚釣島の西北西岸は巉岸屹立し、その高さは1180尺あり、少しずつ東岸ニ向かって下向きに傾斜しており、遠くからこれを望めば、水面上に直角三角形をなしております。本島は極めて清水に富み、その東岸には清流が横流するのを確認しました。海路誌によれば、その沿岸に川魚が棲むのを見たとあります。本島は那覇河口三重域から西7度南230海里のところにあります。

久場島は魚釣島の北東16海里のところあります。海中に屹立して沿岸皆60尺に内外し、その絶頂は600尺あります。久場島も魚釣島と同じく、さらに船舶を寄泊させられる場所がありません。右二島はともに全て石灰石から出来ており、暖地では普通、樹草が石間に茂生しますが、今まで有用の木材はなく、例えば魚釣島の各礁にはわずかに海草が繁茂するのみで、さらに樹木があるのを見たことがありません。特に海鳥が群衆するのは各礁島きわめて夥しく、たとえば魚釣島は清流に富んではいても、その地味が恐くは人間の居住に適するものではなく、要するに右諸島は天が海鳥にその住所を賦與したものということもできます。

本船は久場島から慶良間峡に直航した際に、途上久米赤島を確認しようとし、これに接航したのですが、たまたま夜中に久米赤島付近を通過し、そのとき天気は非常に曇り、真っ暗であり、この島を実験することができませんでした。これは真に残念でした。海路誌によれば、本島は一岩礁に過ぎず、その位置は、東経124度34分北緯25度55分、すなわち那覇三重域より西6度、南170海里あり、四百の巉岸が屹立し、その高さは270尺、遠くよりこれを望めば、日本型の船が装帆したのと違いはないとのことです。本島は外国船にもしばしば確認されておりますが、その位置を報告する場合、内容に異同があります。これは、この島が黒(クロ)潮(シホ)の中流に孤立しているために、各船がみな異なる推測をしたためです。

【中译】

鱼钓、久场及久米赤岛回航报告

上述诸岛屡屡往来外国船只,其景象在诸海路志中有详细记载,今无须更多报告。小官如下欲举海路志所记之要旨,及若干实地勘察之结果。

本船初抵鱼钓岛西岸之时,于离沿岸三四(ケーブル)链之地屡屡尝试勘量,海底甚深,且深浅不一,40乃至50寻,且未见有可下锚之地。

鱼钓群岛由一岛六礁组成,最大者为鱼钓岛,六礁俱列在该岛西岸五六里内,礁脉恐连绵于水面之下。六礁中最大者称曰「ピンナツクル」(pinnacle)礁,形状奇绝,呈圆锥状,突出空中。此「ピンナツクル」(pinnacle)与本岛间之海峡有十二三寻之深,通航自由,唯以潮流甚速,恐非帆船能通过之处也。

鱼钓岛西北之海岸,巉岸屹立,其高1180尺,逐渐向东岸倾下,如远望之,则于水面之上呈直角三角形状。本岛极富清水,东岸有清水横流。据海路志,其沿岸见有河鱼栖息。本岛位于那霸河口三重域以西七度以南230海里处。

久场岛在鱼钓岛东北16海里处,屹立海中,沿岸皆约60尺,其绝顶600尺。本岛同于鱼钓岛,且无可泊船舶之地。此两岛一律由白石组成,暖地虽多树草茂生石间,然从无可用之材,如鱼钓岛各礁仅有海草繁茂而已,未再见有其他树木。尤各礁岛极多海鸟群集,如鱼钓岛虽富清流,其土性却恐不适于居住,总之此群岛可谓天赋海鸟之居所也。

本船自久场岛直航庆良间峡之时,虽小官途中欲认久米赤岛而接近之,然路过之时恰值夜半,当时云天黑暗殊甚,不得付之实践,甚为遗憾。据海路志称,本岛仅为一岩礁,其位置为东经124°34′,北纬25°55′分,即在那霸三重城以西6°以南170海里处,四百(周)巉岸屹立,其高270尺,如远望之,形状无异于日本船之装帆。本岛被外国船只屡屡发现,其位置之报告各有不同,盖以该群岛孤立于黑潮之中,各船推测恐均有出入。